食事は子供の成長にとって欠かせません。
栄養面だけではなく、将来の健全な食生活を営むために、食事を通して食べ物の大切さや栄養バランスなどさまざまなことを学びます。
成長するにつれて、行動範囲が広がり、保護者と一緒の食事から、友だちとの買い食いや食事、孤食など「食行動」や「食事内容」にも変化が現れます。
筆者にも小学生の息子がおりますが、我が子のある「食行動」に頭を悩まされていました。
その食行動とは、食事で食べられなかった食べ物を隠してしまうことです。
我が子が食べ物を隠すという行動を知ったのは小学4年の夏休みのことです。
部屋の片付けをしていたときに、カビの生えたおにぎりが出てきました。
息子に問い詰めると、
「後で食べようと思って、忘れていた」
と、言うのです。
当時は、異常とも思える行動に対して叱ってしまいました。
しかし、食べ物を隠すのは理由があるのです。
この記事では、管理栄養士でもある筆者が、子供が食べ物を隠す理由と、その対策方法について、自身の経験からお話します。
隠しごとをする心理
誰もが、一度は他人に隠しごとをしたいと思うときがあるのではないでしょうか。
まず、「隠す」という心理について考えてみましょう。
隠すことはいけないとわかっていても、様々な気持ちがからみあって、隠してしまうこともあるでしょう。
人が隠しごとをするときに、5つの心理が働くと言われています。
- 相手を大切にしたい
- 自分を守りたい
- 距離を保ちたい
- 優位に立ちたい
- 自分を表現するのが苦手
5つの心理のなかで、「食べ物を隠す」ことに関連すると思われる「相手を大切にしたい」と、「自分を守りたい」の2つについて考えてみましょう。
相手を大切にしたい
相手に本当のことを伝えることによって、傷つけてしまうこともあるでしょう。このようなときには隠したい心理が働いてしまうようです。
例えば、お母さんやお父さんが作ったお弁当をお子さんが食べられなかったとします。すると、自分のために作ってくれた食事を残してしまったら、相手が悲しむと思うかも知れません。
相手を大切に思うからこそ、関係性を良くしたいという気持ちがあるのです。
きっと我が子は、私を悲しませたくなかったのかも知れません。
私は我が子に大きくなってほしいと願い、「食べないと大きくならないよ」といつも口癖のように言っていました。
我が子の体格は「やせ」ではありませんが、肥満度はマイナスに傾いていて、決して大きいとはいえません。
すると、我が子は学校の授業で書いた手紙に「・・・たくさん食べて大きくなるよ・・・。」と記しました。
私が言っていることをちゃんと理解していたのです。
だから、お留守番のときにおにぎりを隠して全部食べたふりをしたのでしょう。
もし、お子さんが食べ物を隠すことがあれば、それは、作ってくれた相手のことを大切にしたいという思いがあるのかも知れませんよ。
自分を守りたい
正直に話すことで、自分自身が辛くなる、あるいは相手に怒られてしまうこともあるでしょう。
遊びに夢中になったり、お菓子を食べたりして食事を残してしまったことで怒られると思い、恐怖感から自分を守ろうとします。
恐怖感を抱いては、食事を楽しむことはできません。
「食べれなくても大丈夫」と逃げ道をつくってあげることも大切ではないでしょうか。
子供はなぜ食べ物を隠すのか
今回は食べ物ということで、「食べたくない」具体的な理由を考えてみました。
子供が「食べたくない」と思うのは次の3つがよく聞かれます。
- 嫌いな食べ物だから
- お腹がいっぱい
- 食べることに集中できない
一つ一つお話しましょう。
嫌いな食べ物だから
子供のころ、嫌いな食べ物を前のしたときの苦痛を覚えている人も多いのではないでしょうか。
筆者も子供のころ、嫌いな食べ物を周りに促されながら必死に食べたり、口にせず、いつまでも食卓に座っていたりしたことを覚えています。
子供の頃は、なぜ食べなくてはいけないのか、が分からないこともあるでしょう。
「食べたくない」けど、残すと叱られるため、隠してしまうことがあります。
一人で留守番のときや、親の目を盗んでこっそり隠して、見つからなければ、責められることもありませんからね。
お腹がいっぱいだから
供の成長のために必要な食事なだけに、残しがちだと不安になりますよね。
子供の栄養必要量は「日本人の食事摂取基準」で設定されています。
日本人の食事摂取基準(以下食事摂取基準)では、子供の体格や成長を考慮して必要エネルギー量を算出しています。
しかし、算出されたエネルギーは年齢ごとの「参照体位」を元に算出されています。
参照体位とは2000年の、厚生労働省の乳幼児身体発育調査報告書(0歳~6歳)と文部科学省の学校保健統計報告書(6歳~17歳)のデータをもとに、男女毎に、身長に対する体重の中央値を求めた標準体重のことです。
ここでいう標準体重とは望ましい体位ということではなく、日本人の平均的な体位です。
だから、算出された必要エネルギー=「食べなければならない」というわけではありません。
お子さんの体格によって、必要エネルギーすなわち食べられる量があるのです。
また、食事摂取基準で算出された必要エネルギーは活動量によっても異なります。
運動など、活動量が増えれば、必要エネルギ−量も高くなります。
我が子のように学校が夏休みで、家でお留守番であれば、必要エネルギー量は増えることなく、すぐお腹がいっぱいになるのもわかる気がします。
食べることに集中できない
子供に限らずですが、ゲームや遊び、テレビなど、興味を引くものがあれと、食べることも忘れてしまうこともあるでしょう。
ましては、一人でお留守番なので、口うるさく人もいません。子供にとってはやりたい放題です。
食べることに執着心がない場合は、お子さんが興味を引くような食事にする必要があるかも知れません。
子供が食べ物を隠しても、叱ってはいけない?
食べ物を隠すことに関わらず、子供が起こすトラブルについて、大声で怒鳴ったり、ゲームを取り上げたりするなど・・・圧力をかけるようなやり方は逆効果です。
強制的に行動を制することで、子供は恐怖や不自由さなどから一時的に行動が変容しますが、本質的な解決にはなりません。
恐怖感から、こっそり隠したり、たとえ恐怖感がなくなっても、また同じことを繰り返したりするでしょう。
「どうして隠してはいけないのか」ということの理解ができない限り、解決することができません。
「どうして隠すのか」ということを子供とよく話し合って、対処することも大切です。
子供が食べ物を隠す対処方法
これまで、「なぜ食べ物を隠すのか」についてお話しましたが、次に食べ物を隠さないためにどうしたらよいかについて考えてみましょう。
子供が食べられる量で
子供の食事量はそれぞれ、体格や活動量、体質などによって異なることはお話しましたね。
また、食事内容や体調によっても変わります。
エネルギー量の多い揚げ物やお肉、糖質(ごはんやパン、芋)が中心の食事ではカロリーが高く食べられる量も少なくなるかもしれません。
体調不良があれば、食欲もなくなるでしょう。
毎日、同じ量が食べられるとは限りません。
お子さんの様子を見ながら、食事量を決めると良いですね。
食事量が少なくても良いの?
食事を全部たべられたとしても、量が少ないと、成長に影響がないか不安になりますよね。
しかし、大人にとっては少ないと感じても、子供にとっては充分なこともあります。
子供が毎日食べている学校給食は「食事摂取基準」を参考に作成されています。
「食事摂取基準」は平均的な体格を元に算出されていますので、子供によっては量が多い場合もあります。
学級によっては給食の量は一律同じではなく、子供によって量を変えているとも聞きます。
成長に障害がないかは「成長曲線」で確認します。
成長曲線とは年齢ごとに身長・体重をプロットして体格の変化を評価するものです。
成長曲線には身長・体重の「パーセンタイル値」が示されています。
パーセンタイル値とはある集団を平均に100等分して、その何番目にあたるかということを意味しています。3~97パーセンタイルを正常範囲としています。
成長曲線が、下方変位していたり、3パーセンタイルより下がっていたりしていないかをみましょう。
食事は楽しく、ときには好きな食べ物を~
健全な食生活を営むためには幼少期のころから食事に興味を持ち、食事を楽しむことが大切です。
食事を楽しむことによって、食意識を高め、適切な食行動に繋がるからです。
我が子のように一人でお留守番中の食事であれば、寂しいと感じるかもしれません。
ましてや、嫌いな食べ物があれば、ますます食欲がなくなり、楽しい食事時間ではなくなるでしょう。
食事に興味がなくなれば、ゲームやテレビ、遊びなど、他のことに夢中になるのもわかる気がします。
お子さんに食事を食べてもらうためには、楽しみのある食事作りを工夫することです。
例えば、次の方法があります。
なるべくお子さんの好きな食べ物にする
好きな食べ物があると、食事の楽しみも増えますね。
食事にバリエーションを
食事に興味がない場合は味付けごはんや丼ものなど見た目を変えてみるのも良いでしょう。
ご飯を残す場合は、パンやポテト、コーン、パスタなどを取り入れるのもおすすめですよ。
自分で調理してみる
子供は成長するにつれて、「自分でやってみたい」という思いが強くなります。
また、自分で調理をすることで食べ物を大切にする気持ちが芽生えるといわれます。
簡単な温め、盛り付けなど危険のない範囲でやってもらうのも良いでしょう。
冷凍食品などから自分でおかずを選ぶことも楽しみの1つになるかも知れません。
嫌いな食べ物は食べなくても良いの?
嫌いな食べ物は無理して食べなくても、他の食品で代用できます。
人参が食べられなくても、同じビタミンの多いトマトやカボチャなど、他の食品に変えることができます。
もちろん、嫌いな食べ物を克服できれば、子供の自信にも繋がるでしょう。
ただ、辛い思いをして食べるよりも、同じ栄養で美味しく食べたほうがより食事を楽しめるということです。
まとめ
子供が食べ物を隠す理由と対処方法についてお話しました。
食べ物を隠してしまうのは次の理由がありましたね。
- 嫌いな食べ物だから
- お腹がいっぱい
- 食べることに集中できない
もし、お子さんが食べ物を残したり、隠したりしましたら、その事実だけを見て叱るのではなく、話を聞いてあげましょう。
改善するには次の5つの方法があります。
- 子供が食べられる量にする
- 好きな物を取り入れる
- 食べ物を隠しても怒鳴らない
- 嫌いな食べ物を控える
- 食事が楽しくなるように工夫
理由はお子さんによってそれぞれですが、多方面から考える必要があります。
よく話し合うことで、対処方法が見つかるかも知れません。
子供が何か物を隠す理由は、「ストレス」や、親など相手にかまってほしいという「愛情不足」であるとも言われています。
子供の健やかな成長のために、楽しい食事時間を過ごしたいですね。
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